■La boheme, la boheme■代表
ピエール「たおれゆく尖塔を目にした瞬間、ああ、俺の国のひとつの歴史が死んだかと泣いたよ」
アドルフ「だが灰色の空に、もうもうと煙を噴き上げ朽ちて行くノートルダムの姿には、滅びの美があったこともまた確かだ。なんていったっけ、ミノリの国の金色の寺を燃やす文学にも似てるじゃないか」
ミノリ「金閣寺ね。小説では美しき金閣への独占欲と反発心みたいに書かれてるけど、実際はただの負け犬根性と世間を騒がせたかっただけの身勝手な犯行らしいから、まだノートルダムの方がましだよ」
アドルフ「なぜそう言いきれる? 原因究明途上だぞ」
ピエール「電気系統の出火と言われていたが煙草の不始末説も出てるんだよなあ。ああ、やめてほしいなあ、喫煙者としてはますます肩身が狭くなっちまう」
アドルフ「テロの可能性もあるし、大統領の陰謀説だって出ている。まだ原因ははっきりしていない」
ミノリ「陰謀……」
アドルフ「なんだ?」
ピエール「やめてやりなさい、そういう目で見るのは。L●△Tのみなさんは、反体制が世界的にデフォルトなんです」
アドルフ「面と向かって人を頭のヤバイ奴みたいに扱うんじゃない。それから別におれは■BG▽の活動に肯定的というわけじゃない」
ピエール「そうだったのか? てっきりゲイリブを連呼しながら横断幕を掲げて集会を司ってそうな気がしたんだが」
アドルフ「レインボーフラッグなんて趣味が悪い旗を俺が好んで掲げるわけないだろう。精神が認めても美意識がゆるさんよ」
ピエール「そこかよ」
ミノリ「それにしても、イエローベストといい、ここ数年ですっかりパリは荒んだ街になってしまったよね。主要空港ではぼったくりタクシーが堂々と商売繰り広げてるし、元々治安の良い町じゃなかったけど、今じゃデモ隊による破壊活動が日常茶飯事だもの。シャンゼリゼ通りなんて危なくて近寄れない」
アドルフ「まあ、俺は家がエトワール広場の近所だから近寄らないわけにいかないがな」
ピエール「アドルフはイエローベストを着なくていいのか」
アドルフ「なぜ俺が一緒になってガソリン代の高騰や賃上げ要求をしなくちゃならんのだ」
ピエール「いや、リベラリストとして旗振りしたいんじゃないかと思って。そういや、ひきこもり同然の自営業者にガソリン代も賃上げも関係なかったな」
アドルフ「お前は俺を何だと思っているんだ」
ミノリ「以上、モンマルトルのバーガーキングからお送りしました」
アドルフ「この世界の発信地はすべからくバーガーキングなのか?」
ピエール「あれ? 改元についてのコメントはなくていいの?」
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