うっすらと開いた視界には、オレンジ色にぼんやりと光る天井……真夏の西日にほの明るく照らし出されるマンションのキッチンで、下半身を露出して果物を無駄にしながら自慰へ夢中になっている己の破廉恥さに、自己嫌悪と憐憫の双方を意識した。
二度、三度と続けて極め、それでも足りない達成感のなさに、とうとうTシャツを脱いで全裸になる。すると開放感と背徳感が、自慰のスパイスとなり、気分がひときわ高揚した。そして乳房に手をかける……授乳期以後は多少サイズが小さくなったものの、それでも未だに膨らんだままのそれは、自分の手に少し余る程度の大きさであり、セックスの度に大和がそこへ指や吸い痕を付けたがった。
瑞穂……。
しかし、不意に脳裏へ過った男の声は、大和ではなく兄、志貴のものだった。
「兄さんっ……んんっ、あ……」
今頃どうして、と考えつつも、肉親を孕ませ、結局捨てた十一歳年上の彼に対して、相変わらず未練を残している己を改めて思い知る。これでは大和が愛想を尽かして家に寄り付かなくなるのも無理はないだろう。
「ああっ、や、ああっ、い、いくっ………」
また大きな波が身体の奥から下腹全体へ広がり、くらくらするほどの快感を得た。とりわけ衝撃的な絶頂感に放心し、頭をぼんやりとさせながら、漸く右手が止まった。
気を落ち着かせて、流し台の下の扉へ預けていた背をのろのろと起こす。そして疲労感が押し寄せる下半身から性具と化した果実を抜き取った。
「うわ……悲惨……」
青い果物は幸いにして型崩れすることはなかったが、瑞々しかった表皮はドロリとした体液に塗れ、それが茎まで流れ落ちていた。何より、手や、内腿を汚している愛液が、青い果汁に染まっている光景は異様であり、またその量の尋常ならぬ多さに呆れる。大きな異物を受け入れ、すっかり襞が開ききっているであろう陰部が、目も当てられない状態であることは想像に難くなく、怠い身体に鞭を打ち、汚した床を急いで片付け、服を切る前に浴室へ飛び込んだ。
大和がどういうわけか志穂を伴って帰ってきたのは、それから三十分後の事だった。
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