「なんだコレ……」
 ずらずらと並ぶヌード写真はほとんどがユーリア人女性の下半身を露骨に撮影しており、開き切ったその場所へ青い果実が茎部分を下方にして深々と突き刺さっていた……これまでそのような検索を一度としてしたことがなかったわけではけっしてないが、今は実家で彼の祖母と遊んでいる志穂が、間違ってもこの場にいなくてつくづくよかったと肝を冷やすとともに、やはりパソコンだけではなくスマホの検索結果にも年齢フィルターをかけておくべきだろうかと実感した。
 生唾をゴクリと飲み込む……そして検索結果の中から適当な1枚を選んで、さらにクリックしてみた。途端に派手な喘ぎ声がスピーカーから大音量で流れだし、慌ててブラウザを終了させる。
 今や売れっ子俳優である大和の自宅は、家賃だけで5000ディールを超える、駅前の高級マンションだ。遊び盛りの我が息子が大暴れをしても、これまで一人の住人からさえ苦情を言われたこともない。それでもAV女優の大音量による嬌声は心臓に悪かった。激しい動悸を懸命に抑えると同時に、改めてダンボール箱を眺め、そしてとりわけ大ぶりな一本を手に取ってみる。
「そういえば、この形って……」
 性の半分は男である俺が子供を産んだ今でも、股間へ変わらず持っているものよりも、一回り大きく、ときおり受け入れている大和の物よりはいくらか小さい……それでいて細く伸びている先端へ硬そうな茎を僅かに残している接触部分から、本体の中ほどを少しずれた場所にある括れより急激に膨らみ丸まっている反対側の先端まで、長さはざっと二十センチ弱もある。そして手に収まるその太さといい、確かにそれは男のあれを思い起こさせてくれた。何より、ぎっしりと中身がつまった重量感がそっくりだ。
 スマホの音量を最小にして、ブラウザを再起動させる。途端に始まった例のアダルトサイトでは、ピタスモモを陰部に入れた金髪の女優が腰を激しく動かしながら派手に喘ぎ声をあげていた……もっとも音量は聞こえてこないが。三分程度の動画であっという間に女優が果てる……それほど悦いのかと思ってしまう。
 ふたたび果実を見る。幸いにして今は一人だ。かつては桜花の種馬であり、今やカミシロ芸能界の種馬と呼ばれる我が伴侶は、どこで誰といるものやら、二週間前に出掛けたきりで帰って来ない。その前から、気まぐれにふらりと帰宅しては、三、四時間も経過すれば出掛けてしまった。気が向いたときには、火がついたように昼夜を問わず、志穂がいようがいまいが、しつこく求めてくるくせに、手を出さないとなると、平気で何カ月も放置される……この数年もそんな状態が続いていた。しかるに、最後にそういう行為をしてから、既に一カ月以上も経っていた。
 身体の中央が熱を孕みつつあった。堪らなくなって脚を擦り合わせるが、こうなってしまうと、昇りつめなければ収まり様がないことは、既に己の性質として熟知している。
 スマホの時刻表示を見る……西日はまだまだ眩しいほどに照りつけているが、すでに夕方六時を十分ばかり過ぎている。そろそろ志穂を迎えに行かなければいけない頃合だが、この時間になると、寧ろ夕食を母達と食べてからでないと帰らないと言われるかも知れない……実際そんなことが何度かあった。いずれにしろ、迎えに行くタイミングとしては、あまりよろしくない気がした。
 あれこれ自分に言い訳をして、デニムのウェストに手を伸ばし、ベルトとファスナーを外した。



「う……あっ、何これ……」
 AVなど見たせいだろうか、始めから慣らす必要もないほどしっかり濡れていた合わせ目は、相方の物と変わらない大きさのひっかかりを持つ先端を、少し力を入れただけで、難なく飲みこんでいった……というより、収めるなりじんじんと熱を発し、道筋を付ける為にほんの少し抜き差しすると、それだけで膣が水音を立ててあっという間に果実は体内へ収まった。
 手に握る分だけ先端を残して、太い部分を奥へ突き刺したそれは、まるでペニスを受け入れているような充実感に満ちており、冷たかった筈の個体は、すぐに体温を移され違和感を消し去っていた。
「嘘……凄くいい……」
 膣を絞りながら軽く動かしただけで、信じられないほど熱が高まる。入り口や子宮口といったポイントを二、三度擦れば、簡単に昇り詰めそうになった。
「や……だ、駄目……」
 相手がいるわけでもないのに、そんな言葉を無意識に発し、思わず手を止めるが、先端を子宮口まで収めたまま、軽く達していた。
そして、この果実がただの果物ではなく、一種の媚薬成分を含んでいると、体験によって理解する……なるほど、名称で検索しただけで、あれほどAVがヒットするのはそういう理由だったのだ。
 立っていられず、固い床へずるずると腰を落とす。果実から手を放しても、一度極めたその場所は、しっかりと逸物を咥え込んで放そうとはしなかった……わが身の浅ましさへ羞恥するとともに、欲求不満を実感した。
 気を取り直してピタスモモを右手で握り込み、力任せに素早く動かした。
「あっ、はぁあっ……んあっ、ああんっ……」


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